グラス

今の現状を肯定したら、空っぽのグラスにオレンジジュースが満たされていくような感覚になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事辞めるときはヘドロが抜け落ちていく感覚だったのと対照的だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、今はモラトリアムなんだよ。大学生の時にバイトばーーーーーーーっかりして、時給900円でやりくりしていた頃とは違うよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

将来が不安で不安でしかたなくて、それでも生活のためにクソバイトのバカバイトをやって、立ち止まって考えている暇もなく強制的に労働をしていた頃とは違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、今は、将来について、自分について、この世について落ち着いて考えて、張り詰めた夜空に星が散らばっているような、静寂と美しさが同居している、どこまでも、どこまでも美しいこの気持ちを胸に抱ける大切な時間。

 

 

 

 

 

 

 

 

世の中の喧騒をよそに、自分の世界だけで、暖かい部屋の中で、温めたミルクティーを飲み、美しいもの、美しい言葉、自分だけに向けられた静謐な思考にぼんやりと身を委ねて幸福な気持ちに包まれて夢見心地になる、貴重で元に戻らない大切な時間なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

こんな大切な時間と大切な思考を、決して俗世間における金銭的な不安のヘドロに侵食させない。侵させてたまるかという話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このオレンジジュースで満たされた素朴なグラスを大切に大切に、壊さぬように、傷付けぬように扱い、腐らぬように、まるで夏の日の少年時代の宝物のように扱っていこう。

 

 

 

 

書いているうちに、心のオレンジジュースが、ガラスの壺や銀の壺に満たされた純水に変わっていった。もちろん、清潔で静謐なテエブルはそのままに。

 

 

 

 

ああ、ああ、心の安寧は大切だよ。